「こういうタイプの人、大っ嫌い!」
そう思ってしまうことは、誰にでもあると思います。
この「大嫌いな人」と「自分」…
なんと!…
「似たもの同士」の可能性が高い。
受け入れがたい話かもしれませんが、
これを心理学で「シャドウ」といいます。
そして、不思議なことですが…
「シャドウ」に気づき、受け入れることで、自分にも他人にも寛容になれると言われています。
心の器が大きくなり、イライラが減り、人間関係もグッと楽になるのです。
今回は、心理学の「シャドウ」について簡潔にお話させていただきます。
心理学の「シャドウ」って、なに?
シャドウを一言でいうと…
「抑圧された欲求」
「無意識にガマンしていること」
「やりたかったけど、できなかったこと」
と言い換えてもいいかもしれません。
たとえば、デパートで、ワイワイ元気な子どもをみて…
「元気でいいね」とほほ笑む人もいれば、
「うるさいな」と腹を立てる人もいます。
なぜ、腹が立つのか?
おそらく、子どもの頃に…
「騒ぐな」
「静かにしなさい」
「メソメソするな」
などと、大人からしつけられ、感情表現をおさえて生きてきたのでしょう。
「自分だって、子どもらしくワイワイやりたかった」
「もっと、素直に感情表現したかった」
このような、心の奥に「封印された欲求」が目を覚まし、怒りとなってあらわれてくるのです。
「ダイエット中に、目の前で焼肉をムシャムシャ食べられると、腹が立つ」のと、似ています。
自分が「禁止」していることを、目のまえで見せられて、腹が立つのです。
これと同様に、
●「甘え上手な女子社員」に腹が立つのなら…
「甘えたいという欲求」を隠して生きてきたのかもしれません。
●「年賀状を送ったのに、あいつは送ってこない」と腹が立つのなら…
自分にも、「書きたくない」という欲求があるのかもしれません。
●「楽してガッポリお金を稼いでいる人」に腹が立つのなら…
自分にも、「楽してガッポリ稼ぎたい」という欲求があるのかもしれません。
昔から、
「やきもち焼きの、浮気者」
「ケチな人をほど、ケチを嫌う」
などと言われますが、この心理も「シャドウ」といえます。
ワイドショーをみながら、ブツブツ文句を言いたくなるのも、
ネットやSNSで、誹謗中傷をかく人の心理も、
利害関係のない人に腹が立つのは、「シャドウ」であるケースが多いのです。
人間嫌いや、人間不信の人ほど、「自分の中にあるシャドウの数が多い」と推測できます。
「シャドウを受けいれる」と、心が広くなる
シャドウという、心の奥に「抑圧された欲求」。
それが「いい・悪い」という話は抜きにして、
とりあえず「私にも、そういう欲があったんだ」と受け入れる。
すると、不思議なことに…
・今までの怒りが、徐々に消えて無くなる
・他人の不完全さにも寛容になれる
・自分を愛せると同時に、他人も愛することができるようになる
と言われています。
これを、「シャドウの受けいれ」「投影のひきもどし」といいます。
それを証明する出来事が、先日、我が家でもありました
↓↓
妻と観ていたテレビで…
「お笑い芸人・カラテカ入江さん、友達5000人!」と。
その友達の中には、有名スポーツ選手・大手IT企業の社長から、大物芸能人の家族まで。
そうそうたる顔ブレでした。
それを見ながら、妻がボソッとひと言。
「なんか、ムカつく」
それを聞いて、ピン!ときました。
「利害関係のない人に腹が立つということは、シャドウに違いない」と。
そして、
ブチ切れられるのを覚悟で、こんな失礼な質問を、妻にぶつけてみました↓
・もしかして、『あの人も知り合い、この有名人も知り合い』って自慢したい気持ちある?
・『芸能人の結婚式に、よく招待されるんだ』とか、自慢したい気持ちはない?
すると、妻は…
…
…
数秒の沈黙のあと
…
…
大きな声で、こう言いました。
「ある!ある!ある!ある!めっちゃある!」
ブチ切れられることなく、ホッとしたのですが…
これが、妻が「シャドウを受けいれた瞬間」です。
さらに、こう尋ねてみました。
「ところで、まだ入江さんにムカつく?」と。
すると、妻は…
「あれ、消えてる!」
さらに、
「あの人も、それなりの努力をしてるんだよね」と、逆に褒めていました。
怒りの原因は、「相手」ではなく、自分の心に「抑圧された欲求」。
それを正しく認めることで、相手に寛容になれると同時に、心がスーッと軽くなる。
心の「器」が、ひと回り大きくなるのです。
「善のシャドウ」もある
ここは、ちょっと余談ですが、「善のシャドウ」というものもあります。
たとえば、「今まで、あまり人に親切にしてこなかった人」は…
親切な人をみたときに、
「あんなのは偽善だ」
「カッコつけるな」
「大きなお世話だ」
と無性に腹が立ったりします。
ということは…
自分にも、「人に親切にしたい」という欲求がある証拠。
それを抑圧しているから、苦しいのです。
「おれにも、人に親切にしたい欲求があったんだ」と素直に受け入れることができれば、その先の人生がガラッと変わってくるかもしれません。
まとめ
「自分を愛することができなければ、他人を愛することはできない」と、心理学でいわれています。
そのための第一歩が、「シャドウの受けいれ」。
自分の心の奥にある「欲求」を知ることで…
「人間という生き物」の実態が見えてくる。
「人間、思ってたほど立派じゃないよね」と思えてくる。
それを正しく理解したときに初めて、
不完全な自分にも、不完全な他人にも、寛容に生きられるのだと思います。
ソクラテスの「汝自身を知れ」という有名な言葉も、
「シャドウに気付きなさい」ということかもしれません。
「シャドウの受けいれ」には、多少の勇気は必要です。
「気に入らない相手と、同じ欲がある」と認めることですからね。
ただ、それを受けいれることで…
人間関係がグッと楽になるし、
「自分が人間好きになれば、他人からも慕われる」という好循環も生まれてきます。
多少の苦痛をともなうかもしれませんが、やって損はないと思いますよ。
愚者は己を賢いと思うが、賢者は己が愚かなことを知っている
(シェークスピア)
以上、【シャドウの心理学】人間関係をグッと楽にする意外な方法、でした。
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