今回のテーマは、最高の幸福感「共同体感覚」とは。
幸せのかたちは人それぞれですが…
ぼく自身は、共同体感覚が最高の幸福感であり、幸せになるための一番の近道だと思っています。
共同体感覚とは、もともとアドラー心理学の言葉。
アドラー心理学において、共同体感覚は「悟りの境地」みたいなものです。
「最高の幸福とは、共同体感覚を持って生きることですよ」とアドラーも言っているわけです。
というわけで、共同体感覚についてできる限りわかりやすくお伝えしていこうと思います。
共同体感覚とは
いきなり申し訳ないのですが、共同体感覚の説明は…
●わかる人には わかる
●わからない人には わからない
大きな声ではいえないのですが、有名な心理学の先生の本を読んでいても、共同体感覚のことをちょっと勘違いしている先生が意外と多いんです。
でも、普通のおばあちゃんでも、共同体感覚をしっかり理解している人もたくさんいます。
なぜか?というと…
共同体感覚は「感覚」だから。
梅干しを食べたことがない人に、「梅干しを食べたときの感覚」は理解できません。
それと同じで、感覚は、学ぶのも教えるのも難しいのです。
でも逆からいえば、その感覚を一度つかんでしまえば、もうこっちのもの。
「感覚」だから、わかってしまえば簡単なんです。
というわけで、「どのように伝えたら分かりやすいかな?」と頭をひねった結果、簡単な物語にしてみました。
「自力と他力」というお話。
これがわかれば、共同体感覚を理解したのも同然。
すぐに終わりますので、少々お付き合いください。
むかしむかしのお話です。
六兵衛さんは、大阪から江戸まで行くことになりました。
当時はまだ、道らしい道がなかったので、自力で草をかきわけて進んでいくしかありません。
川には橋がないので、自力で泳いで渡ります。
もちろん飲食店もないので、自力で食べ物を調達します。
その結果、江戸に到着するまでに100日間かかりました。
この場合…
六兵衛さんは、誰の力も借りなかったので、自力100%ということになります。
数年後、再び六兵衛さんは、大阪から江戸に向かうことになりました。
前回とは違って、ところどころに橋がかかっていました。
地元の人たちがお金を出しあって、川に橋をかけたそうです。
また、ところどころに茶店もできていました。
腹ごしらえを簡単に済ますことができます。
そのおかげで、江戸まで70日で到着。
前回より、30日も短縮できたわけです。
ということは…
自力⇒70%
他力⇒30%
ということになります。
OKですね。
そしてさらに数年後、六兵衛さんは大阪から江戸に向かうことになりました。
今度は、地元の人たちの協力で、道がきれいに整備されていました。
宿場町もでき、夜はゆっくり休むことができます。
歩き疲れたときは、籠をつかうこともできました。
そのおかげで、江戸まで30日で到着。
最初より、70日も短縮できたわけです。
ということは…
自力⇒30%
他力⇒70%
ということになります。
このように考えていくと…
現代の私たちは、自力が何%になるのでしょうか?
ここからは、ぼく自身の話で恐縮ですが、
すこし前に、名古屋から伊豆まで日帰り旅行に行ってきました。
ぜんぶ自分で運転したから「自力100%」と思ってしまいますが、全然そんなことはないんですね。
たとえば「道路」。
きれいな道路をスムーズに走れるのは、炎天下で工事してくれる人たちのおかげ。
そして、税金を払っている国民のみなさまのおかげです。
それから「車」。
車は、ぼくがつくったものではありません。
自動車メーカーの人がつくってくれて、整備するのも車屋さんです。
ガソリンも、ぼくが取ってきたものではありません。
世界のどこかで、誰かが石油を掘ってくれて、遠い国から船で運んでくれる人がいて、それを精油してくれる人がいて、ガソリンスタンドまで運んでくれる人がいる。
ぼくの代わりに頑張ってくれている人がいて、そのおかげで車を動かすことができるわけです。
着ている服も同じ。
服・下着・靴下・靴…。
これらがなければ外出できないわけですが、自分で作ったものは何一つありません。
それから、コンビニや道の駅。
あちこちに24時間営業のコンビニや道の駅、高速のパーキングがあるから、安心して旅ができるわけです。
もしもトイレがなかったら、とても伊豆まで行く気にはなれません。
こうやって考えてみると、自力というのはせいぜい0.1%くらい。ほとんどが他力。
世の中の人たちの力に支えられて、伊豆までの日帰り旅ができたわけです。
旅だけではなく、コーヒー1杯でも同じです。
コーヒーを自力で作ろうとしたら、まずはコーヒーを育てなければなりません。
ブラジルに行って、タネを取ってくるところから始めるわけです。
そうなると、自分で船を造らなければいけない。
そのための材料・工具・設計図・紙・ペン…
これらも自分で作らなければならない。
こう考えていくと、コーヒー1杯ですら自力で作ることは不可能。
それらの作業を、どこかの誰かが自分の代わりにやってくれているから、簡単にコーヒーを飲むことができるわけです。
コーヒーだけでなく、世の中のすべてのものが同じ。
キャベツも牛肉も、電車も石鹸も、綺麗な水も、1から自力でつくることはまず不可能です。
今こうしてブログで情報をお伝えしていますが、これもパソコンを誰かが作ってくれたおかげ。
それから、インターネット回線を24時間管理しているくれる人のおかげ。
それを動かすための電気をつくるために、今この瞬間も、奥深い山の中で24時間管理してくれる人がいるのです。
その人たちに支えられて、こうして情報をお伝えすることができるわけです。
私たちは、1日を一生懸命生きているわけですが、それでも自力はせいぜい0.1%くらい。
もしも電車も道路もなければ、会社に到着するまで何日かかるかわかりません。
99.9%は、他の人の力によって支えられている。
これが、現実なのです。
この現実をしっかり受け入れたときに、共同体感覚が芽生えてくる。
・人間は弱くて限界のある存在なんだ
・自分一人では生きていけないんだ
・すべての人の協力で、毎日の生活が成り立っているんだ
そして…
●自分が生きていられるのは、みなさまのおかげなんだ
●微力ながらも、自分も恩返していこう
という気持ちになれる。
これが、共同体感覚です。
共同体感覚の効果
そして、さらに共同体感覚を磨いていくと、さまざまな気持ちの変化があらわれてきます。
①心から感謝できる
靴下1枚でも、消しゴム一個でも、「これすごいなぁ。どうやって作るんだろう。ありがたいなぁ」と感動や感謝の気持ちが湧いてくる。
それと同時に、「すごく価値のあるもの」に思えてくるものです。
②人間を好きになる
人間すべてが、自分と同じ共同体。みんな協力しあって生活している仲間。
それをしっかり理解できたとき、自然と人間を好きになっていくものです。
③やる気が出てくる
「自分は共同体にすごくお世話になっている。共同体は命の恩人だ」
そう思えたときに、「自分も微力ながらも恩返ししていこう。社会に貢献していこう。人を笑顔にしていこう」という気持ちが自然と湧いてくるものです。
④食べ物が美味しくなる
たくあん1枚や味噌汁一杯であっても、それができるまでの手間や、農家さんの笑顔などを想像しながら食べると、不思議なもので、今まで以上に美味しく感じるものです。
その結果、毎日を幸せにイキイキと生きられる。
これが、共同体感覚の効果です。
長い長い説明になってしまいましたが…
実は、「共同体感覚をたった2文字で表現した言葉」があります。
「自分」
「自分」=「自身」+「部分」
たとえば、心臓の細胞。
心臓の細胞は、細胞自身であり、同時に心臓の部分。
心臓という共同体に所属しなければ、生きていけない存在です。
そして心臓は、心臓自身であり、同時に私の部分。
「私は心臓が強いから、ときどき心臓一人で散歩しています」ということはありませんよね。
当たり前ですが、心臓は、私という共同体に所属しなければ生きていけない存在なのです。
同じように、私は、私自身であり、同時に人類の部分。
人類の協力があって、はじめて生きていけるのです。
そして、人類は、人類自身であり、同時に地球の部分。
地球は、地球自身であり、同時に宇宙の部分。
こうやって考えていくと、すべてのものはつながっていて、すべてのものは共同体。
細胞<心臓<私<人類<地球<宇宙
この中のどれか1つが欠けるだけでも、自分は生きていけない。
自分が自分でいられない。
だから「自・分」と書くのです。
さらにもっと凄いので…
「共同体感覚をたった1文字で表現した言葉」があります。
「恩」
恩という文字は、「四角い部屋に大の字、そして心」。
これをイラストにすると、こんな感じです↓
「私がこんなにのんびり過ごせるのは、誰のおかげだろう?」と考えている状態。
「この家は大工さんが一生懸命作ってくれたんだ。扇風機も、座布団も、毛布もどこかの誰かが作ってくれたんだ。ああ、ありがたい」
そんな状態が「恩」という漢字です。
もう1つ ついでに、「幸せ」という言葉も共同体感覚をあらわしています。
「しあわせ」=「仕・合わせ」
「みんなの仕事が一つになったときにはじめて、世の中の人々がしあわせに暮らしていける」ということ。
まさに共同体感覚ですね。深いですね。
共同体感覚の磨き方
ここまでの説明で、共同体感覚がどういうものかをご理解いただけたかと思います。
次に共同体感覚の磨き方。
磨けば磨くほど、幸せになれますからね。
では、どうすれば共同体感覚を磨けるのかというと、やり方はこれしかないと思います↓
「1つ1つ 想像をめぐらす」
たとえば、歯を磨いているときに…
「歯ブラシって凄いよな。どうやって作ってるんだろう?」
「もしも歯ブラシがなかったら、歯がボロボロだろうなぁ」
宅配便が来たときも…
「翌日に届くって凄いよなぁ」
「私が寝ている間も、夜通しでトラックを運転してくれてるんだろうな」
道路工事を見ても…
「あっ、共同体ががんばってくれている。朝から晩までご苦労様です」
それから食事。食事は一番やりやすいです。
「サンマはどこから取ってくるんだろう。これで150円って凄いよなぁ」
「ソーセージ1本でも手間がかかってるんだよな。ありがたいな」
このように、一つ一つに思いを馳せる。
そうすることで、共同体感覚は磨かれていくものです。
福井県に、有名な永平寺という禅の修行道場があります。
そこの開祖・道元は、こんなことを言っています↓
「目の前に置かれた食事ができあがってくるまでの手かずを考え、その食事を受けるに足る正しい行いができているか、自己を省みながら食せ」
「共同体感覚を忘れちゃいけないよ。ちゃんと恩返ししていこうね」という教え、でしょうね。
ちなみに、食べ終わったときに「ご馳走さま」と言いますね。
この「馳走」という漢字は、「忙しく走り回る」という意味です。
「世の中の皆様が、忙しく走り回ってくれたおかげで、食事にありつくことができました」
これを短縮した言葉が「ご馳走さま」なのです。
まとめ
少し前にテレビを見ていたときに…
お寺でロケをしていて、加山雄三さんがこんなことを話していました。
「人間はたった一人では生きていないですよ。ぜんぶ関わって、いろんな人に助けられて。そういう心になっていくことの大切さ。みんなの心がつながって、すごい幸せになるなと、つくづく思うんです」
「共同体感覚は大切だよ。多くの人が共同体感覚を身につければ、すごく幸せな世界がやってくるね」ということでしょう。
「50年以上も芸能界のトップに君臨する人は、やっぱり言うことが違うな、考えていることが違うな」と、びっくりしました。
80歳を超えても、元気で陽気でエネルギッシュな加山雄三さん。
その秘訣も、きっと共同体感覚なのでしょうね。
☆☆☆
以上、最高の幸福感・共同体感覚とは、でした。
●こんな記事もありますよ