善人は損をするのか?得をするのか?
すこし前に『親切の3つ効果』という記事を書きました。
「人に親切にすると、ものすごく得をしますよ」という内容です。
でも、「善人は損をする」とか、「いい人すぎると馬鹿を見るぞ」という話もときどき耳にします。
善人は損をするのか?得をするのか?
真実はどちらなのでしょうか。
ネットでもいろいろ議論があるようで、「善人は損をする」という意見がやや優勢といったところ。
でも実は…
これについては研究が進んでいて、すでに結論も出ています!
結論からお伝えすると、
●いい人は、ものすごく得をする
●いい人すぎると、大損する
ポイントは、「すぎる」という部分です。
では、「いい人すぎる」とは具体的にどういうことを指すのか?
その答えは、コンピュータによって明らかにされました。
驚くことに、コンピュータが「いい人間関係を築くためのベストな生き方」をはじき出したのです。
しかも、その方法が単純明快!
だれでも、今日からすぐにできるシンプルな生き方です。
前置きが長くなってしまいましたが、これが今回の記事のあらすじ。
人の悩みの80%以上は「人間関係」と言われています。
だから、今回の記事は世界中のすべての人に読んでもらいたい。
「理想的な人間関係」や「理想的な世の中」をつくるきっかけになるはずです。
また、
「いい人間関係をつくれなくて困っている」
「ズルい人にいつもつけ込まれてしまう」
そんな方には、絶対に読んでいただきたい内容です。
善人は損をするのか?得をするのか?
話をすすめるにあたって、人の性格を「3つのタイプ」に分類させていただきます。
①いい人
・与える量>受けとる量
・親切な人、人情に厚い人、善人
②ズルい人
・与える量<受けとる量
・自分勝手な人、意地悪な人
③普通の人
・与える量=受けとる量
善人の研究結果
ペンシルバニア大学のグラント教授は、「善人のほうが成功するだろう」という仮説で研究をすすめていました。
そこで、まず調べたのが…
各業界で下位に位置する人、つまり「上手くいかない人」はどういうタイプなのか?
その結果は…
なんと!「いい人」ばかり
技術者・医学生・営業マンなど、どの業界の調査でも結果は同じ。
成績・地位・収入が低い人の共通点は「いい人」だったのです。
仮説がハズレたグラント教授は、ひどく落ち込みました。
「善人は損をするのか…」
でも、そこであきらめないのがグラント教授のいいところ!
では、反対側の「上手くいっている人」はどんなタイプの人間なのだろう?
その結果は…
これまた!「いい人」ばかり
成績・地位・収入がウンと高かったり、周りの人たちから信頼されてトップに立つような人間は「いい人」がほとんどだったのです。
「ズルい人」と「普通の人」はというと、その中間に位置していました。
研究結果をグラフにすると、こんな感じ↓
まさに「善人の二極化」ですね。
「上位のいい人」は、人生が順調なだけでなく、寿命も長いことが他の研究でわかっています。
「下位のいい人」は、ズルい人につけ込まれたり、こき使われたり。しかも、ストレスの影響で心臓病のリスクも高いそうです。
この結果をみて、ぼくがピンときたのは「営業」の業界。
トップ営業マンは、賢い人よりも、たいていは「人間性のいい人」がなるそうです。
「どうせ買うなら、あなたから買いたい」とお客様に選ばれる人ですね。
一方、先輩にお得意様を横取りされたり、社内に悪いうわさを流される人も「いい人」なのだそうです。
では、「上位のいい人」と「下位のいい人」とでは、いったい何が違うのでしょうか?
「上位のいい人」になるには、どうしたら良いのでしょうか?
その答えを、コンピュータが明確にはじき出しています。
「上位のいい人」になるのは、とても簡単なことだったのです!
コンピュータが見つけた「いい人間関係を築くためのベストな生き方」とは
ミシガン大学教授で政治学者のロバート・アクセルロッドさんは、東西冷戦の激化をきっかけに「いい人間関係を築く方法」を探していました。
そこで思い付いたのが「コンピュータ対戦ゲーム」。
バーチャル社会をつくって、「どんな性格がいちばん得をするのか」を競わせることにしたのです。
心理学者・経済学者・数学者・社会学者など、さまざま分野の研究者に協力をお願いしました。
”もっとも得をすると思われる性格”をプログラミングしてください!
第一回目の大会に出場したプログラムは、15種類の性格。
・つねに善人のプログラム
・つねに人を裏切るプログラム
・気まぐれで、いい人になったり悪人になったりするプログラム
・相手の出かたしだいで態度を変えるプログラム
などなど。
さまざまな性格のプログラムが、バーチャル社会で「得点(利益)」を競ったのです。
勝つのは悪人か?善人か?それとも…
最初のうちは、当然のように「人を裏切るプログラム」が目先の利益をかせぎ、得点を得る。
ところが、人間関係が形成されてくると、状況が逆転。
最終的に、高得点で優勝したのは「とても単純なプログラム」でした。
それも、たった2行のプログラム。
①すべての人に対して「いい人」でいる
②ただし、前回裏切った人に対しては、今回こちらが裏切る
これをもう少しわかりやすく言えば…
「みんなに親切にするが、ズルい人に対しては優しい顔をみせない」
これを「しっぺ返し戦略」と名づけました。
第二回大会では、約4倍の「62種類のプログラム」が参加。
かなり複雑な性格のプログラムも参加したそうです。
ここで優勝したのは…
またもや「しっぺ返し戦略」
どんな人間がいようとも、とても単純な「しっぺ返し戦略」が最強。
「みんなに親切にするが、ズルい人に対しては優しい顔をみせない」という生き方が、いちばん得をする生き方だったのです。
「いい人すぎる」とは、どんな人?
この記事の冒頭で、「いい人すぎる」の『すぎる』がポイントとお伝えしました。
「すぎる」とは、具体的に何なのか?
もう、おわかりですね!
はい、その通り!
「ズルい人にまで優しくする」こと
これが「すぎる」。
いい人が損をする原因だったのです。
イヤな仕事を押し付けてくる先輩とか、平気で「ちょっと金貸して」と言ってくる友達とか。
そういう人にまで優しくしていると、相手がますますつけ上がり、自分がドツボにハマっていくということです。
ぼくの尊敬するある方が、よくこんな話をします↓
「悪に好かれたら、自分も悪だよ。迷惑な人にまで優しくしてはいけないよ」
これも、まさに「しっぺ返し戦略」ですね。
ズルい人に優しくする労力を、他の人に向ければ、多くの人と「絆の深い人間関係」ができてくる。
すると、ズルい人も、あなたを丁寧に扱う必要がでてくる。攻撃を受けたとしても、強気でいられる。
「しっぺ返し戦略」を続けることで、自分にとって「最高の環境」ができあがるのです。
その後の研究で「しっぺ返し戦略」を上回る生き方が見つかった!
アクセルロッド教授は、その後もほかの研究者たちと「もっといいプログラム」の研究を重ねました。
苦労に苦労を重ねた結果…
「しっぺ返し戦略」を上回るプログラムがとうとう見つかったのです!
そのプログラムとは、「しっぺ返し戦略・プラスアルファ」。
①すべての人に対して「いい人」でいる
②ただし、前回裏切った人に対しては、今回こちらが裏切る
ここまでは、「しっぺ返し戦略」と同じ。
追加されたプログラムは…
③相手に裏切られたとしても、場合によっては許してあげる
「デートに1回遅刻したくらいなら、許してあげようよ」みたいなことですね。
「許す」というプログラムを追加することで、大きな利益を取り逃がすことが少なくなるそうです。
「しっぺ返し戦略」は実生活で使えるのか?
アクセルロッド教授は、私たちが「しっぺ返し戦略」から学べる教訓をまとめています。
長い内容なので、ぼくなりの解釈で簡潔にお伝えします↓
①まずは「自分から」積極的に親切にする
・いい出会いを待っていたのでは、重要な出会いのチャンスを取り逃がす
・「この人とはウマが合わない気がする」「イヤな人かもしれない」という先入観は捨てる
・たまには「イヤな目に遭う」ことも覚悟する
②日々、すべての人に優しく接する
・人から感謝されるような存在になることを目指す
③ただし、ズルい人には優しくしない
・きっばりと断る
・ナメられないように毅然とした態度で接する
・できれば、その人とは距離を置く
④たまには許してあげる
・場合によっては相手を許す
・一生 許さないのではなく、ほとぼりが冷めたら相手を許す
まとめ
コンピュータ・シミュレーションでは最強だった「しっぺ返し戦略」。
「みんなに親切にするが、ズルい人に対しては優しい顔をみせない」
ただ、実生活になると、もう少し複雑な要素もからんできます。
感情・血縁・立場・状況・つき合いの年数・義理、などなど。
その分、自分なりの「微調整」も必要になってくると思います。
何はともあれ、しっぺ返し戦略を頭に入れておけば「生き方の目安」にはなるはず。
少なくとも、「善人なのに損をする」という最悪の人生はまぬがれることができるでしょう。
もしも、あなたの周りに「ズルい人の餌食」になっているような人がいましたら、ぜひこの話を教えてあげてください。
きっと、その人の人生が変わるきっかけになると思いますよ。
《参考文献》
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以上、「善人は損をする」は本当?コンピュータが出した驚きの結論とはというお話でした。
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